「おはようございます!」
小学校のとき、学校までの道で出逢う、お家の前をお掃除している大人たちに挨拶するのが好きな子だった。朝から大きな声を出すことが、気持ちよかった。それに、目の前の人を無視すると失礼な気がした。挨拶することで、みんなが笑顔であったかいエナジーが溢れる瞬間が好きだった。
帰国後、初めて定職に就き、10-6のデザインのお仕事をしていたときのこと。オフィスは恵比寿の高層ビル11階。階段ですたすた上がると、心拍数も上がり、脳内酸素も増えて、朝からハッピーで仕事をこなせるので、毎朝階段を使っていた。
階段を上がって気持ちよくなることと同時に、まさおさんに逢うのも楽しみだった。いつしか挨拶するようになったこのまさおさん。彼は、ストレートの長い髪を後ろでゆわっているアーティストのような人。無口で、うつむき加減で、アイコンタクトもあまりない。でも、あたたかそうなお人柄がにじみ出ているような人だ。
スー、カタッ。スー、カタッ。まさおさんが階段をお掃除する音が聞こえて来る。
「おはようございます!」
「おはよう。今日も笑顔が素敵だねぇ〜」
ほとんど毎朝出逢うようになった。
「おはようございます!」
「おはよう。今日も綺麗だねぇ〜」
シャイに見えるまさおさんだけど、いっぱい褒めてくれる。
「おはようございます!」
「おはよう。今日も輝いてるよ〜」
まさおさんに呪文をかけられたかのように、いつもキラキラしたシャワーを浴びて朝を過ごした。まさおさんがいない日には、少しがっかりした気持ちになった。
「おはようございます、まさおさん。最後の日に逢えてよかったです!」
「本当に悲しいよねぇ。。。もう生き甲斐がなくなるねぇ。。。
みほこさんなら何をやってもうまくいくから大丈夫だよ。頑張ってね。」
「本当に、毎朝あたたかく支えてくださって、ありがとうございました。
まさおさんも、どうぞお体に気をつけてくださいね。」
握手をして、お別れした。
まさおさん、今頃どうしているかな。
あなたの中のまさおさん、今日も元気ですか?
「今日も笑顔が素敵だよ〜」
「今日も綺麗だね〜」
「今日も輝いているよ〜」
Mihoko Love 🦋